決死隊員

 この春、愛妻家の平野謙が独身者の僕をみつめてニヤニヤ笑いながら、決死隊員というものは独身者に限るそうだね、妻帯者はどうもいかんという話だよ、と仰有《おっしゃ》るのである。これは平野謙の失言だろうと僕は思った。原稿紙に向えば、こういう気楽な断定の前に、まだ色々と考える筈の彼なのである。こうなると、女...

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梅若万三郎や菊五郎の舞台

 僕は梅若万三郎や菊五郎の舞台よりも、サーカスやレビューを見ることが好きなのだ。それは又、第一流の料理を味うよりも、ただ酒を飲むことが好きなのと同じい。然し、僕は酒の味が好きではない。酔っ払って酒の臭味が分らなくなるまでは、息を殺して我慢しながら飲み下しているのである。 人は芸術が魔法だと云うかも...

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京都の夏は暑い

 ところが、僕は一度だけ例外を見たのである。 それは京都であった。昭和十二年か十三年。京都の夏は暑いので、僕は毎日十銭握ってニュース映画館へ這入り、一日中休憩室で本を読んだりしていた。ニュース映画館はスケート場の附属で、ひどく涼しいのだ。あの頃は仕事に自信を失って、何度生きるのを止めにしようと思っ...

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