生家の栄誉や富

 このような躾けの良さは、必ずしも生家の栄誉や富に関係はなかろうけれども、然しながら、生家の栄誉とか、富に対する誇りとか、顧みて怖れ怯《おび》ゆるものを持たぬ背景があるとき、凡人といえども自らかかる毅然たる態度を維持することが出来易いと僕は思う。 とはいえ、栄誉ある家門を背景にした子供達が往々生れ...

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淪落に就て

     二 淪落に就て

 日本人は小役人根性が旺盛で、官僚的な権力を持たせると忽《たちま》ち威張り返ってやりきれぬ。というのは近頃八百屋だの魚屋で経験ずみのことで、万人等しく認めるところだけれども、八百屋や魚屋に縁のない僕も、別のところで甚だ之を痛感している。 電車の中へ子供づれの親父やおふく...

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青春とは何ぞや?

 七十になっても、なお青春であるかも知れぬ。そのくせ老衰を嘆いて幽霊になるほどの実のある生活もしたことがない。そのような僕にとっては、青春というものが決して美しいものでもなく、又、特別なものでもない。然らば、青春とは何ぞや? 青春とは、ただ僕を生かす力、諸々の愚かな然し僕の生命の燃焼を常に多少ずつ支...

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